『鈴なり星』の雑記

こちらは『鈴なり星』の平安時代物語や創作小説以外のブログです

『源氏物語 愛の渇き』


源氏物語 愛の渇き 大塚ひかり
       ワニの選書¥1400』

昼メロ風なタイトルがピッタリ、源氏物語に登場する女君たちの、「女としての忍耐」について考察した本です。

愛に殺された女・タカビシャな女・あきらめた女・野望の女…と言えば、どの女がどの女君を指しているのか、源氏好きな人ならすぐわかると思います。それぞれの女ごとに考察があるのですが、文章のあまりのメッタ斬りぶり&悲観思想ぶりに、源氏物語の初心者の頃にこの本を読んでたら、きっと源氏物語が嫌いになっていたかも。それくらい暗いエロと下ネタに満ち、文章もかなりあけすけ。かなり過激な文学論です。

光る君と関わらなければ、私はこんな苦しみを味わうことなかったのに…という女君たちの恨みつらみが、各章から立ち昇っています。
そんな怨嗟を出し切った挙句、じゃあ女君たちの心の葛藤にまるで気づかなかった主人公の光源氏に、悩みや苦しみってあったの?夢のような御殿のハレム生活で幸せだったんじゃないの?否。やっぱり光る君も愛に餓え続けていた、と著者は解説。後半で評している薫の君も同様。
読めば読むほど「こんな陰鬱な見方もあったのか」と後ずさりしたくなるような本です。そこがいいんです。