『鈴なり星』の雑記

こちらは『鈴なり星』の平安時代物語や創作小説以外のブログです

『幽霊物件案内/幽霊物件案内2』


『幽霊物件案内』『幽霊物件案内2』
      小池壮彦著 同朋舎

心霊スポットに著者が出向いてのルポ本かと思いきや、カテゴリを分けての普通の怪談実話。
カテゴリは、
幽霊物件案内 :ホテル・住居・学校・会社・病院・飲み屋・喫茶店
幽霊物件案内2:(ホテル~飲み屋)・放送局・車その他・ホテル特別編

掲載されている話は、著者自身が見聞きした話ばかり、とのこと。読んだ感じでは虚実ないまぜっぽかったですが、淡々とととりとめなく仕上げた文体がよかったです。
一話一話がブツ切れのような終わり方が多く、
「そうだよね、奇妙な話に納得いく終わり方なんてないよね」
とあらためて思った次第です。

場末感が漂う設定での体験談が多いです。人生の裏街道に出入りしている人たちの怪談話は強烈。いちばん強烈だったのが『赤身の女』。体験者は、非合法な商売をしている女性ですが、ラブホテルのバスルームを開けると、皮が剥がれて赤身むきだしの真っ赤な女に飛びかかられた。間一髪のところでドアを閉めたが、女の手をドアの隙間にはさんでしまい、それでも力いっぱい閉め切ると、隙間から出ていた四本の指がブチンとちぎれて床に散らばった、という話。すごいわこの姐さん。もうこの赤身女が現実なのか霊なのか姐さんの脳内の出来事なのかどうでもよくなるくらいの度胸。「そんなの気にしてたらこの商売勤まらないしね!」って言ってそう。

他にも小学生の頃から盗んだバイクを乗り回していた子(現中学生)のラブホテルでの体験談とか。普通の人たちの怪談話の中に、こういった普通じゃない人たちの話がチョイチョイ混ざっています。愚連隊のような人たちとのパイプ持ってるなんて、著者の幅広い人脈には恐れ入ります。

この著者もただ者ではないようです。北海道のホテルで金縛りに遭って黒い影に襲われた後、ポカリスエットを7本飲んでようやく落ち着いた、という『観光会社の人が勧めた幽霊ホテル』。ポカリ7本一気飲みが最初誤植かと思った。7本てw怖い気分にひたってたのが一気に消滅したわ。
2巻めの放送局・車その他で、ようやく不気味な感じが戻ってきました。放送局の章は、各TV局の土地の由来なども書かれてあり、局内での怪現象はもう読み返したくないくらいの禍々しさ。淡々とまとめる著者の文体が、さらに怖さを増します。放送局ネタはもっとページを増やして欲しいくらいでした。