『鈴なり星』の雑記

こちらは『鈴なり星』の平安時代物語や創作小説以外のブログです

空想科学読本6 & 科学バカ人生!


空想科学読本6 柳田理科雄
   メディアファクトリー¥1320』

空想科学読本3』で著者が書いた、「アルプスの少女ハイジがオープニングで操る巨大ブランコ運動」の笑撃の考察を読んで以来チェックしている同シリーズから平安ネタを紹介します。

1.斉信に出世争いで負けた誠信が、『大鏡』では激怒のあまり握りこぶした指を手のひらに貫通させて憤死。そんな誠信の握力はいったいどれくらいと推測されるか。
2.『枕草子』で常軌を逸するほど耳のいい藤原正光は、蚊のまつげが落ちる音が聞こえたそうな。聴力はどれくらいよかったのか?

こんな非現実的な事柄をあえて科学的に検証すると、アラ不思議、驚愕の新事実が次々に明かされてゆくという。

1では、まず厚みが人間の手と同程度でヒフと骨のある肉を用意し、実際に握り締めてみる。だがまるで貫通しない。次に指と同じ形に切った木の棒を肉に押し付け、肉にめり込んだ時の力を測定。するとどうなったか。

2では、まず人間のまつげが落下する速度を出し(空気抵抗含む)、そこから蚊のまつげ(本当にある!)の落下速度を求める。そして蚊のまつげの落下エネルギーが、人間の耳に落下音がギリギリ聞こえる程度の物体の落下エネルギーの何分の1かを求めてみる。
すると1の結果、常人の握力では握り締めたくらいじゃ貫通は現実的に不可能、よって指が人並みはずれて長かった、という結果を導き出した。

実際、誠信の指がそこまで長ければ、芸術方面で相当名をあげていただろうと思う。指が長いことで有名なピアニストの魔術師リストのように、琴や琵琶の超難曲をラクラクこなし、技術面で歴史に名を残す名人になったかも。
あと、指が長ければそれだけで手が美しく見える。美しい重ねの色の袖口からのぞく、長い指したなまめかしい手は、平安女子の心をゾクゾクと妖しくときめかせたに違いない。

2の計算上の結果では、常人が耳を10cmまで近づけなければ聞こえないヒソヒソ声が、41km離れても聞こえることになるという。つまり、東西4.5km南北5.2kmの広い平安京のどこで発せられた可聴音も、正光にはすべて筒抜け。まさに音の氾濫。
だが人間の耳は単なる集音器ではなく、自分にとっての聞きたい音と聞く必要ない音を能で瞬時に区別する機能を持っているので、正光はそういう意味(音の取捨選択)でも、聴覚器官や脳がとっても発達していたということになる。

大鏡中納言あらそい』も『枕草子・正光のスーパー地獄耳』も、まあ古典文学によくある誇張法のひとつ。もっとトンデモ事象満載な『今昔物語』や『平家物語』を空想科学検証したら、もっととんでもないことになるよネーと笑ってたら、
ありましたありました。

 

『科学バカ人生!(同著者 同出版社)』に、
平家物語は、空想科学ゴコロをいたく刺激する!」
というページが。

・瀕死の清盛を石の水槽に入れるとたちまち沸騰!しかもかけた水が炎に!
・夕暮れ時の島の工事の時間を延長させようと、扇をふって太陽を逆に戻した!

4間(約7.3m)先の清盛の体の耐え難い熱さを、仮に真夏の太陽光の2倍の熱量程度だとしたら、清盛公の体温は1500℃。1500℃の発熱体を水温20℃の水槽に沈めると、計算上で水は140リットル蒸発する。一般家庭の浴槽の半分くらいの水が気体となって空中に消えたことになる。ただし平家物語には、「水が沸騰した」いうだけで「水槽の水が半分くらい減った」とは書かれていない。
古代には沸騰の概念はあっても蒸発や気化の概念はなかったか、140リットルの水の蒸発が誤差の範囲で済むくらい超デカい水槽だったのか。

あと水が炎となって渦巻く問題だが、水は燃えない。燃えるとしたら、水分子が超高熱分解して水素が燃えてる場合。これなどもはや核融合、宇宙レベルの温度となる。
宇宙レベルで言えば太陽を扇で逆に戻した件。これも地球の自転を逆転させたという答えしか残っていない。地球の自転が逆転した場合の地表および地核の状態の考察が大爆笑モノ。西に沈みかけたお日さまが東に戻ったら、喜ぶのはバカボンのパパくらい。喜びながら、慣性の法則に従って宇宙の彼方へぶっ飛んでゆくバカボンのパパの目に、最後に映ったのは地表面の融解か大噴火か。壮大すぎるよ平家物語

文章あまりにも面白いんでかなりコピペして紹介しました。
平安本じゃないけど平安ネタということで。