『鈴なり星』の雑記

こちらは『鈴なり星』の平安時代物語や創作小説以外のブログです

漫画『豆腐百珍 百番勝負』


豆腐百珍百番勝負 花福こざる著 イーストプレス社¥1102』

江戸時代に豆腐料理を数多く紹介し「豆腐百珍」をエッセイ漫画にした本。
一話一品、百珍メニューすべておいしく?作って食べています。

時期的に手に入らない木の芽は粉山椒でとか、入手できない調理道具はフライパンやクッキングペーパーで代替えとか、とても苦労している過程を面白おかしく漫画にしています。

百珍と書いてあるくらいなのでさぞかし珍奇なメニューが、と期待していましたが甘かった、予想のさらに上を行く珍奇さ斬新さ。絶対美味しいと予想できる一品から材料がだいなしになる予感の一品、味の見当がまるでつかない一品や作るの不可能では?と思う一品などさまざま。秘伝ゆえ作り方秘密ってメニューまであるし。

ショウガ10個をすりおろして8時間ひたすら煮るからみ豆腐。
豆腐10丁にお茶600g投入して煮る茶豆腐。
宿砂(カルダモン)と肉桂(シナモン)を味噌に混ぜて焼く出世田楽。
豆腐を薄ーい短冊状に切って結ぶ結び豆腐。
この結び豆腐、著者のこざる氏はどうやっても結べなかったのですが、試し読みした新潮社の「豆腐百珍」には結んである豆腐の写真が載ってるんですよ。絶対無理だと思うんだけど、プロの料理人の手にかかると水引きのような美しい結び目の絹ごし豆腐が出来るのか、と驚きです。

美味しいメニューも荒唐無稽なメニューも混ぜこぜのカオスな本ですが、江戸時代にできた原本の豆腐百珍の著者は料理人ではなく文化人枠の人らしく、料理本と言うより読み物の本としての面白さを追求しており、洒落や遊び心を大事にしたサブカル色の強い、みうらじゅんのような人だったのではないか、とこざる氏は推測しています。

豆腐10丁にお茶葉っぱ600gとか、豆腐10丁に油2合とかなんでこんなに大量なの?これが江戸の粋なの?と不思議なのですが、もっとヘンなのは「味付けはお好みで」というメニューが結構あること。みんなが作っても同じ味にならない、そんなわけわからない謎のレシピ本が江戸時代に流行っていたとは。

意外と使えるレシピ満載とオビ文に紹介されていましたが、使えるかどうかはともかく、うんちく満載で絵もステキ、各話の最後の一行所感も面白く、わかりやすくて愉快な本でした。