『鈴なり星』の雑記

こちらは『鈴なり星』の平安時代物語や創作小説以外のブログです

『怪談実話コロシアム 群雄割拠の上方篇』


『怪談実話コロシアム 群雄割拠の上方篇
  幽編集部編 MF文庫ダ・ウィンチ¥590』

怪談専門誌『幽』と『冥』の「怪談コロシアム」というコーナーに掲載された作品を書籍化したものに中山市朗氏の書下ろしを加えたものです。

まず装丁がユニーク。悟りの丸窓からくいだおれ人形と稲荷狐とたこやき用のタコが覗き、装飾ドクロがコウモリと一緒に跳梁跋扈。怪談にコテコテの関西風味を足したらこんなイメージになるなんて面白い。今の実話怪談の装丁にはない元気な感じがとても好感持てます。

中身も闘技場(コロシアム)にふさわしい勢いのある作品ばかり。すっかり安定トレンドになってしまった精神系怪談やオチなし系怪談の前は、こんなワチャワチャした元気な怪談がたくさん読めたし読み手のこちらもテンション上がったし、いい時代だったよね。いや今のトレンドもいいけどさ。

一番楽しめたのは宇津呂鹿太郎氏と伊計翼氏。特に宇津呂氏の「誰にでも除霊はできる」。霊を退散させるのはファブリーズではなくエロ。煩悩の前には霊もかすむという話はとても面白かったです。「推し」に夢中になると不安感が吹き飛ぶ、みたいな説を思い出した。
伊計氏の話、関西人気質を下げて下げてたまに上げて、を延々と続けながら怪談するという落語のような話はとても好み。「西の人々、西の怪異談」の第一話、不審な音がしてると調べてみたら、実は何でもなく…のはずが何とも恐ろしい結末になり、という不気味な話。すごく楽しめました。

今年流行語にエントリーされた「知らんけど」が2014年発行のこの本にも出ている。かなり前からなじんでるこの言葉がいまさら流行語にエントリーされるなんて、SNSの伝播力も大したことないの?知らんけど。