『鈴なり星』の雑記

こちらは『鈴なり星』の平安時代物語や創作小説以外のブログです

『今ひとたびの、和泉式部』


『今ひとたびの、和泉式部 諸田玲子著
        集英社 ¥1700』

天才的に情感あふれる秀歌をそれこそ息をするように次々と詠む歌人って、宮廷社会の憧れの的としてもてはやされ、大変なステイタスがあるんだと感心しました。実務能力よりも、別次元の芸術的センスを持った人が圧倒的に高い評価を受ける、それが本著の主人公和泉式部。

・貴族社会の最高のエリートたちに言い寄られる
弾正宮・帥宮・橘道貞・源頼信・藤原安保昌・道命…出会った大物権力者にだいたい言い寄られてるのですが、唐突に言い寄る彼らの恋の動機がもうひとつよくわからなかった。特に弾正宮を亡くした直後、帥宮との恋の始まりに戸惑って迷う式部と帥宮の心の動きが相当なふたりよがりぶり。好奇心?和泉式部に言い寄って成功すること自体が自分(帥宮)の価値を高めているとか?

・絶対的権力者藤原彰子が手放さなかった
道長の娘彰子サロンのブランドを高める重要な天才歌人として認知されていて、彰子のお気に入りの式部にすり寄る殿上人たちがいっぱいいた。

…とまあ火遊びから本気までいろんな恋を堪能しまくる式部ですが、本著からは彼女の代名詞「浮かれ女」のイメージは感じられなかったです。後先のことは考えず、ただひたすら真面目に”今この一刻だけ我を忘れてみたい”と思っていたような。で、後年の夫の藤原保昌も「彰子サロンを盛り立てる女房として遊び用彼氏を作って楽しむのはまったくかまわないが、サロン外での彼氏は許さん」と釘を刺される始末。
2児の経産婦にもかかわらず、このまま恋愛市場を泳ぎぎる生涯を描く小説かと思いきや、物語の最後数十ページで驚きのミステリー展開に。一気に読んでしまいました。
和泉式部の没年不詳を上手に生かした流れとか、道長の死に際の懺悔を書き留めた行成の日記の行方とか。そうきたか、没年不詳や死因不詳を上手く取り入れてさすが、と感嘆しきり。