『鈴なり星』の雑記

こちらは『鈴なり星』の平安時代物語や創作小説以外のブログです

『怖いこわい京都、教えます』


『怖いこわい京都、教えます 入江敦彦
         新潮社¥1300』

京都めぐりした人、これから京都観光行く人、京都市内在住者は楽しめる本。

それ以外の人にはやや不親切。あー悪口じゃなくてですね、著者は生粋の京都人であるためイケズ精神が骨のズイまでしみ込んでいて、どうしても、
「ウットコに来たことのない『よそさん』になんぼ親切に教えたってねぇ(苦笑)」
みたいなのが文章ににじみ出てるんですよ。
重ねて言いますが悪口ではありません。これが、やや年配以上の京都人の気質なんだと思われます。

京都市内のいわゆるトワイライトゾーンを紹介したエッセイとでも言いましょうか、怪談風味はうすいです。

神社・寺・石・坂からトンネルまで、普通に観光客としてはしゃいでいれば簡単に通り過ぎるのに、いざ裏伝説を知ってしまうと途端に不気味で得体の知れないスポットになってしまう、そんな88箇所を短いエッセイで紹介しています。
私の住む奈良も京都に負けない歴史の重みと寺院の数をほこっていますが、この京都独特の「得体の知れなさスキのなさ」はないですね。

狭い洛内に1200年の歴史の重み。他人の目や体面に気を使い続けて1200年。そんな京都人たちの心の負の澱(おり)が何層にも重なって、その一番上が華やかな綾錦や金ぱくで飾られ、「よそさん」の目を美しく眩ませ、京都に群がらせている。
美しく微笑む京都の、不気味な裏面が堪能できる本です。