『鈴なり星』の雑記

こちらは『鈴なり星』の平安時代物語や創作小説以外のブログです

『火葬場で働く僕の日常』


『火葬場で働く僕の日常 下駄華緒著
         竹書房 ¥1100』

先日読んだ「遺体と火葬のほんとうの話」が葬儀屋サイドの話なら、こちらは火葬場サイドの話。漫画です。
著者の下駄華緒さんは火葬場職員として実際に焼き担当をされているバリバリ現場の方です。
制御盤のボタンを押して自動で火葬が始まりそして終了するものだと思っていたらとんでもない。炉の裏では職員さんが熱さと轟音の中、汗をかきながらバーナーを調節し、炉の中で焼きスルメのように動きまくるご遺体がきれいな「気を付けの姿勢」に仕上がるよう、がんじょうな鉄の棒デレキを突っ込んで、常に姿勢を調整してくれているんだと知っておどろきました。その壮絶な過程たるや、葬儀社さんの本でもあったように「ぜったいきれいな骨にしてお返しするぞ」のプロ意識が感じられ、もう本当に頭の下がる思いです。

何から何まで知らないことばかり。
お腹と脳みそが焼きの中で一番臭いってマジか。
以前読んだ「いまどきの死体」の著者も現場の超プロですが、腐乱状態はともかく、司法解剖しててこの部位が臭いとか特に書いてなかったしなあ。あ?あれか。常温の髪の毛は何にもにおわないのに、焼けた途端すごくイヤなにおいになるのと同じ理由かな。

ペースメーカー付きのご遺体と感染症で亡くなったご遺体の危険さは、「遺体と火葬のほんとうの話」とほぼ同じ主旨のことが書かれていました。感染症などは、息をしていないご遺体なんだから感染なんかしないでしょ?と思いがちですが、ご遺体をうっかり動かしてしまうと肺の中の空気が外に漏れ出て感染してしまうことがあるとか。コロナウィルスが一類感染症扱いだった頃の火葬場は本当に大変だったことも描かれています。

やけどやケガ、感染症などからの安全の確保の他、他の職業とは違うトラブルも多そう。でも絶対必要な公共インフラ、それが火葬場。最期(医師の死亡確認)の最期(葬儀)の最期(火葬)を担ってくださる人たちに敬意を払おうと思う一冊です。