『鈴なり星』の雑記

こちらは『鈴なり星』の平安時代物語や創作小説以外のブログです

『遺体と火葬のほんとうの話』


『遺体と火葬のほんとうの話 佐藤信顕著
         二見書房 ¥1400』

創業90年超えの老舗葬儀社を経営する著者。葬儀手配の現場で長年働いてこられた方の語りは(比較するのもなんですが)実話怪談作家のそれとは全然違って、「気づき」がたくさんありました。

そもそも死体洗いのバイトなんてデマがどうして広まったのかという俗っぽい都市伝説の説明から、損傷の激しい遺体の処置、季節・体重によって大きく変わるドライアイス管理や棺運搬の苦労、孤独死なんて死ぬ側からしたらまったく恐れる必要ないこと、葬儀屋として警察への苦情などなど実例がてんこもり。追加料金一切不要をうたう葬儀社は危ないとか、「ペースメーカーや副葬品は破裂して火炉の窓を割る時があるので必ず申告して。これくらい良いでしょなんて黙ってコッソリ入れるの絶対やめて」なんてことも書いてあります。

葬儀社の社長である著者が一番心を砕いているのが、ご遺体の保全・感染症に対するスタッフの安全確保・そしてどのような状態のご遺体であろうと絶対きれいなお骨にしてお返しするぞという矜持。

「誰にも迷惑かけずに死にたい」誰しもが思うこと。
けれど、
「誰かに頼らないと骨になることもできない」のです。
あらゆるパターンのお弔いを仕切ってきた著者の語り口はわかりやすくとても丁寧。オススメです。