『鈴なり星』の雑記

こちらは『鈴なり星』の平安時代物語や創作小説以外のブログです

修理完了。當麻寺の「ミツバチの仁王さん」

 


天理市のなら歴史芸術文化村で特別展示されている『當麻寺の仁王さん』に行ってきました。
この仁王さん(阿形像の方)は20年以上前から像内に出入りしているニホンミツバチの影響で汚損がひどく、2022年からこの歴史文化村の修復工房で解体修理されていましたが、無事に修理も終わり、完成記念の展示が行われています。5月12日まで。阿形像の修理完了後は、やはり同じく経年劣化している吽形像の修理が始まります。

展示室は全て撮影禁止。修理前、経年劣化とミツバチのミツやミツロウがしみ込んでかなり黒ずんでいた仁王さまは、明るく美しくまさに威風堂々そのものになりました。ミツバチが奥にうごめくのが見えていた汚れた玉眼は、パンフレットどおりのいかつい眼差しになり、命を吹き込まれたかのように輝いて見えます。

この仁王像は昔から地域で「ミツバチの仁王さん」と親しみを込めて呼ばれていました。ハチたちは仁王さんの口や玉眼の隙間から出入りし、頭部の空洞に長年巣をつくっていたとか。ニホンミツバチたち数千匹を殺生しないよう、現場での頭部解体は花の蜜が豊富な5月に行い、専門家の立ち会いのもと、新しい巣箱を横に置いて追い払ったハチが巣箱に引っ越しするのを辛抱強く待ったとか。頭部の空洞はミツロウがみっしりで驚き。ハチとしては仁王さんの頭部内はこわい敵はいないし風雨もしのげる、まさに一等地だったろうと思われます。その後ハチが引っ越しした巣箱は春日山原始林の中に移されたそうです。

今回の修理の過程が詳細に展示されて、とくにビデオ説明がわかりやいです。阿形像はハチなどの虫が出入りしないよう内側から木のフタがされ、もう安心です。


これは解体修理中のミニチュア。模型です。すっごく精工にできていて、ああ解体修理の現場ってかなり体力勝負なんだなーと思いました。

今回の解体修理のニュースは、仁王さまの頭部内に出入りする数千匹のミツバチの様子がかなりクローズアップされ、ローカルニュースでとても注目されていましたが、地元住人の自分ですら行ったことのなかった文化財修復展示棟に初めて足を踏み入れたことが、個人的な収穫です。想像以上に大きな工房、見上げると天井クレーンが至る所に走ってて、見下ろすと何十種類もの古代的大工道具が。超近代的な部屋と1000年前の仏師たちが使ってそうな道具がギャップ過ぎる。