『鈴なり星』の雑記

こちらは『鈴なり星』の平安時代物語や創作小説以外のブログです

『おちくぼ』

 

落窪物語のコミカライズ。古典の落窪物語の小説化は田辺聖子氏や氷室冴子氏がありますが、どこにも氷室さんの名前が表記されていないにも関わらず、どうしても氷室さんの落窪物語を強く意識して読んでしまう。『なんて素敵にジャパネスク』『ざ・ちぇんじ!』『月の輝く夜に』氷室さんの描くキャラを具現化できるのは、山内さんの漫画しかないとすら確信してる。
氷室さんの死後描かれた漫画なので、名前を使用するのは大人の事情がどうたらこうたらなのかな、と勝手に思っています。

で、『おちくぼ』に戻ります。
もう言うことなしの大満足!です。
古典の落窪物語では常に受け身でおとなしいだけのヒロインの姫だったのが、心の底までは絶望や悲観に染まりきっていない柔軟な心の持ち主で、しかもわりと天然な姫になってる。男君の右近少将は絵に描いたような都イチの貴公子で、陽キャで高スペックな超モテ男なのにとてもピュア。なんかもう主人公二人ともピカピカ輝いていて、これぞ少女漫画ってかんじ。
主人公だけじゃなく脇役から端役にいたるまですべてのキャラが立っていて、あこきや惟成や北の方はもちろんのこと、右近少将の家族や兵部少輔夫妻、蔵人少将と三の君夫妻までも個性が光ってる。そして感動の大団円。相当はしゃいだ気分で全巻読み終わりました。
悪役北の方は、氷室冴子著『落窪物語』のあとがきで「何があっても改心しない、ひがみっぽくアクの強い北の方が大好き」と氷室氏ご本人がおっしゃってて、憎々しいほどの面構えで悪役の限りを尽くす北の方を描くことが、山内氏から故氷室氏への敬意なんじゃないかなーと、これまた超勝手に思っています。

あとちょっとだけ気になったことが。
第6巻P143のあこきのセリフの「姫さま」と「北の方」のワードは逆だと思うんですけど…(持ってる本は第1版です)。
なんか大きなカン違いだったら恥ずかしいので小声でつぶやいてみました。