『鈴なり星』の雑記

こちらは『鈴なり星』の平安時代物語や創作小説以外のブログです

『辺境メシ』


『辺境メシ 高野秀行著 文藝春秋¥1650』

著者いわく、大学の探検部でアフリカ遠征時、食糧事情的にやむを得ない極限状況から野生動物を片っ端から食べるはめになったとのこと。そして、
「ヤバそうだけど食べてみよう」
から、
「ヤバそうだから食べてみよう」
に変わっていったとのこと。

実際、辺境の地に住む人々の前で「ノーノー、そんな気持ち悪いモノ食べられない」と拒絶するより、同じものを同じように食べた方が現地の人の親近感もわくというもの。そうやって同じように食べ、同じ場所で寝て、一緒に歌って踊っているうちにこの本ができたのだと思います。食を通しての現地の人々との非常に具体的な交流が熱く語られています。不快になるかと思ったけどぜんぜんそんなことなかった。


黄色のオビに目次の一部が書いてある通り、かなりエグイ野生の生き物の食リポですが、現地の人々の食の習慣を貶めたり、「ほらほらこんなに気持ち悪いんですよ」などとは絶対あおらないスタイルの著者。ただただ探求心のみの一点突破で世界のヤバい地域もヤバい事情も困難もどんどん乗り越えていく、その文章に爽快感さえ感じます。

さすがに「胎盤餃子」は倫理的にどうなんだ?と疑問を感じたけど、長い年月かけてその土地に根付いた食の習慣は、現地の人が自主的にやめない限り絶対に無くならない。21世紀初頭に急拡大したSARSは感染源がハクビシン、コロナはコウモリか食用ネズミか?と言われているけど、上記の理由から、野生動物の売買および食用をいくら取り締まっても無くならないと思う。だってそれを食べることが定着しちゃってるんだもの。
ただ、加熱はしようね著者。加熱大事よホント。