『鈴なり星』の雑記

こちらは『鈴なり星』の平安時代物語や創作小説以外のブログです

『山 怪』

 

『山怪 田中康弘著 山と渓谷社 ¥1200』

『山怪』『山怪 弐』を読みました。
山での不思議な出来事を、全国各地のマタギ、猟師、林業関係の方々からひたすら聞き取り記録した2冊。大多数が怪火、狐および狸に惑わされた話ですが、日本全国の山には共通する「得体の知れない何か」があって、それが比喩表現としてキツネとかタヌキというワードに集約されているんじゃないかと思います。

不気味で説明のつかない事態に遭遇した時、どうしても納得するために答えをひねり出した結果、それはキツネの仕業でありタヌキの仕業であり、何百年も昔なら天狗の仕業も加えられたに違いない。正常なメンタルを保つためにも、そうやって仮の答えを作って納得する必要があったのでしょう。

『弐』は八甲田山あり、土葬や昔ながらの火葬の話ありでなかなか怖いエピソード多数。以前の日本の火葬は野焼き同然で、火の番をした恐怖の一夜の話などはそこら辺に転がってる実話怪談よりゾクゾクします。コロナがインドで大流行して火葬が追い付かず、コロナで亡くなった大勢の人たちをたてよこに並べて大規模火葬したニュースをテレビで見、いやいやいやアカンでしょ燃え切らないし地獄絵図だよとゾッとしたのを思い出しました。

土葬もこの本では昔の話として紹介されていますが、日本の火葬普及率99.9%以上といわれる現代でも、奈良県北部の一部地域には今でも土葬の風習があるらしいので他所の地域よりは身近な話かも。

まさかの『山怪 参』もあるそうで、著者の聞き取り調査すごいな。現地に出向いて足で調査記録するスタイルの人ってホント尊敬する。