『鈴なり星』の雑記

こちらは『鈴なり星』の平安時代物語や創作小説以外のブログです

『そっと、抱きよせて』


『そっと、抱きよせて 幽編集部編&東雅夫監修
             角川文庫 ¥520』

このタイトルにこの表紙。怪談本にしてはかなりの変化球攻め。
第一弾『ずっと、そばにいる』はまさかの再録ばかりだったけど、こちらは書下ろしと書いてある。ほんまやろな!(ホントでした)

タイトルからして切なくガーリーチックな話ばかりの予感。まさか『心に残った幽霊供養』みたいな心温まる系の話ばかりかな~と思いきや、ほのぼのした話はなく、『怪談実話系 愛』の第二弾的な本でした。
霊をがっつり目撃した話はほとんどなく、著者たちが体験した不思議なエッセイといったかんじ。婦人公論とか週刊○○とかに載ってても違和感ないくらい怪談臭ありません。

印象に残ってる話をいくつか紹介しますと、

『七人道連れ(香月日輪)』
話も興味深かったけど、文章と文章の間の行間の使い方が上手いなーと感心しました。左右の余白にはさまった一行だけの文章。これがなかなか魅力的でぐぐっと引き込まれます。この本読んでる最中に氏の訃報を知り、文体からして男性かと思ってたら女性と知りさらに驚き、しかもお若いと知りさらにさらに驚き、しんみりしてしまいました。合掌。
『霧中の幻影(安曇潤平)』
たぶんこの話のたたき台は木下順二作『たぬきと山伏』に違いないwwいや失礼。でもそれくらい既視感のある日本昔話的な話。無事下山できたあと、気象庁のサイトで遭難当時の山の天候状況をぜひ検証してもらいたかったです。
『猿工場の怪(朱雀門出)』
知人の肝試しを聞いた著者が、真相究明にのめりこみ出すあたりの憑りつかれ感がけっこうゾワゾワ。終始落語のノリで大変おもしろく読めました。オチまで用意されてたしww
ここまで落語風を通したのなら、ラストは「おあとがよろしいようで」と締めくくっても許せるかも。