『鈴なり星』の雑記

こちらは『鈴なり星』の平安時代物語や創作小説以外のブログです

『牛車で行こう!』


『牛車で行こう! 平安貴族と乗り物文化
     京樂真帆子著 吉川弘文館』

表紙の美しい女車は、宇治市源氏物語ミュージアムに展示されている実物大の牛車。
ミュージアムで初めて見た時、うおおでかいなーと予想外の大きさにびっくりしました。物見窓なんて見上げるくらい高い位置にあるし。車輪がド迫力の外径で、例えて言うなら、巨大なオフロードタイヤ付けて限界までシャコアゲしたジムニーみたいな印象。
車を引く牛の背の高さを考慮したらハブはこれくらいの高い位置になるんだな、だから牛車の屋形の高さってバスの屋根くらいあるんや。。。と驚いたものです。
中に女房人形が一体見えたので、一人用の牛車かと思ってましたが、この本によると牛車は4人乗りが標準サイズ。大きく感じたけど、十二単フル装備の女房4人が乗るにはちょっと狭すぎない?しかもこれを牛たった一頭に引かせるって、牛くん重すぎて苦しいやろ。。。実物大牛車を目の前にして、いろいろ考えさせられました。
平安時代の貴族って、車種(檳榔毛とか糸毛とか)や屋形の装飾のランク付けはもちろんのこと、誰に車を貸したとか誰と同車したとか日記に残すほど気にするし、使用にあたってマナー違反をすれば陰で冷笑されたうえにやはり日記に残されるなんて、現代人には理解しがたいイケズさです。京の都大路や小路を走らせてるだけでガンガンに値踏みされるとかもう大変。
牛車尽くしで一冊できあがってしまう著者の博識と熱意に脱帽ですが、難しい文献(日記など)の引用をとてもわかりやすく説明し、目次のフォントにもこだわって色々と変えているところも地味におしゃれで見やすい仕立てになってます。専門家でなくても手にとって読んでみようかな、と思える一冊。おすすめです。