『新・紫式部日記 夏山かほる著
PHP研究所 ￥1600』
フィクションとはいえこんな設定見たことない！とひっくり返るほど大胆な仕掛けがあって、途中からかなり熱中して読んでしまいました。
てっきり『紫式部日記』の現代語訳的な小説だと思って購入。道長一族の礼賛や同僚女房達との交流、天皇の御輿を苦しそうに担ぐ人を見ては自分も同じ立場だとウツになり、水面下で足をもがいている水鳥を見ては自分と見比べてしまう、そんなこじらせ女子紫式部の過ごす日々かと思いきや、ネガティブ思考ながらも道長や妻倫子、娘彰子らに高い評価を受け、常に心の葛藤を続ける紫式部の人生が描かれてました。
来年始まる大河ドラマ『光る君へ』の紫式部の作中人物設定は、この本の式部でもういいんじゃないかと思うくらい好感のもてる式部像でした。
ラストの道長との二人きりの体面シーンなどは、道長の心の吐露なども非常にリアル。自分の器は小さいと半ば認めながら、
「時勢が私に順番を回してきたのだ。貴族は、自分の代で出世が止まったら子孫は没落していくようになっているのだから。つかんだ幸運をものにしようとがむしゃらにやってきたにすぎない」
このセリフを吐く人間道長、そのまま大河ドラマの道長像でいけそうな気がします。
