『鈴なり星』の雑記

こちらは『鈴なり星』の平安時代物語や創作小説以外のブログです

『怪談徒然草』


『怪談徒然草 加門七海
    角川ホラー文庫¥552』

とても怖くておもしろい怪談実話本でした。
目次も「後味の悪い話」「嫌な感じの幽霊」「ある工場の話」「首にまつわる話」「障子の黒い点」などなど見るからに怖そうな字ヅラばかり。実際、内容もとても一人では読む事ができないような話ばかり。会社の行き帰りとか休憩中とか、とにかく周囲に人がいるところで読んでました。
読後も「ウワー怖かった怖かった、面白かったけどとにかく怖かった。もう二度と読む気がしない!早く処分しよ」
と古本屋に速攻で持っていくつもりでしたが、ブログに書くために恐る恐るもう一度本を開いてみると…

アレ?あんまし怖くないどうして???

よくよく読んでみると、起承転結が全部著者の頭の中だけの話、というのがけっこうあるんですよね。何を根拠にしてそこまで関連付けようとするんだろう、という話もチラホラ。

そんなわけで、二度目はとても冷静に読めました。

本当の話かどうかはともかく、著者の脳は本当に「そう感じている」わけだから、著者にとっては事実なのです。日常茶飯事的に体験しているそうなので、3日ほど頭に電極つけて調べてもらったらすごく興味深いことがわかるに違いないと思います。日常から非日常、つまり霊が見える瞬間に移った時、脳のどの分野が励起し始めるか、とか。

心底怖かったのは「ある工場の話」。
土地自体がおかしい、と思われる場所に立つ工場の話ですが、その工場も家相が最悪、住んでる経営者も土地の異様さに感化されて精神的にちょっとヤバい感じになってる、その工場の一画にある寮の中に棲むモノは…そんな話です。

その次の「二階が怖い」もいやーな話でした。
私が子どもの頃、夜、一階の茶の間で家族みんながくつろいでいて、二階の部屋に何かを取りに行こうとして、母に「暗いから一緒に来てよ」と何気に言ったら、

『何がおって怖いんや』

と笑って言われたことを思い出した。
この一言で、子供心に、ひと気のない二階が一気に怖くなったんですよねえ。

大人側から言えば、怖がりの我が子をちょっとからかっただけなんだろうけど、いまだにこの言葉が忘れられません。今はゼンゼン怖くないけど。