『鈴なり星』の雑記

こちらは『鈴なり星』の平安時代物語や創作小説以外のブログです

『歴史の中の皇女たち』

 


『歴史の中の皇女たち 服部早苗編著
         小学館 ¥2800』

古代から幕末まで、天皇家に生まれた女性たちがどのような人生を辿ったか、あるいは辿らされたのかが非常にわかりやすくまとめられている良本。
古代-平安時代-中世前期後期-江戸時代
に区分し、各区分をさらに、
1.時代背景
2.その時代の皇女たち
と二部に分けていて、その整理度の高さから、密度濃い内容なのにすんなり頭に入る、というのもいいです。

皇女と切っても切り離せないポストが斎宮や斎院。二年の長きに渡る潔斎期間に、かんじんの代替わりした天皇斎宮の父母が死去した場合、せっかく卜定されて潔斎中の斎宮ってどうなるのだろうとか、斎宮制度はどんな時代背景の中でどんな終焉を迎え廃止に到ったのかとか、自分にとっての長年の謎が、著者の推測ではなく資料にのっとって解説してあるのもいいです。こんなに詳細に解説してある本ってちょっと見当たりません。

皇女もピンキリ。天皇上皇に溺愛された皇女・重要ポストに君臨した皇女・悲運の皇女などなど、歴史にその名をとどめた有名な皇女についてはともかく、特に愛されもしなかった皇女・あるいは普通の身分の女房に手を出して生まれた皇女など(こういうタイプの皇女の数が圧倒的に多い)がどんな運命を辿って行ったかなども詳しく書かれています。生み捨て同然で認知もろくにされなかった皇女たち。でも天皇家の血だけはしっかり流れている皇女。ある意味とても厄介な存在だったのかもしれません。

室町時代あたり、天皇家が衰退の一途を辿る環境の中で、同じく特権をどんどん剥ぎ取られていった皇女って、裕福な商家の娘の方がどれだけ幸せかと涙したくなる人生歩まされてます。
ごくごく一部を除いて全員まとめて『尼さん』修行行き。院政時代は貴族の家に養女に出されていた皇女たちは、貴族も天皇家も財政が逼迫し始めた頃から皆『由緒ある尼さん』にさせられます。生まれた瞬間、あるいは生まれる前からすでに人生コースが決定されているのです。高貴な血はそう簡単に裕福な武士どもに下げ渡せないんでしょう。悪用されても大変ですしね。

誰か一人くらい型破りな皇女がいて欲しいところですが、広い外の世界を目隠しされて生きている皇女たちに、自分の人生自分で動かそうというたくましさは育たなかったようです。