『鈴なり星』の雑記

こちらは『鈴なり星』の平安時代物語や創作小説以外のブログです

『綺麗になる古典美人道』


『綺麗になる古典美人道 大塚ひかり
           小学館¥1400』

美容雑誌『美的』に連載されたコラムをまとめた本。
『医心方』美容篇を中心に、古典文学の中に見られる平安美人たちの具体例を挙げながらのエッセイです。
平安貴族の追求した、モテる色・モテる香り・モテる肌のお手入れ・モテる手の作り方・モテるための洗顔方法・モテるための姿勢…古代の美容にまつわるエピソードってこんなにたくさんあるんだとビックリ。平安物語の随所に見られる貴族の姫の日常も、身体の各パーツごとにまとめたらこんなにおもしろいエッセイになるんだなーと感心しました。ブスから美人まで、平安人のルックスの考察にかけては、この著者の右に出る者はいないんじゃなかろうか。

当時浸透していた仏教思想では、人間は美醜で判断されており、現世のルックスは前世で自分がしでかした善悪の結果と考えられていました。
男も女も、美しい人は「前世でどんな善行を積んだんだろう」と賞賛され、醜い人は「どんな悪行を」と生きてること自体が罪のように指さされ…醜い人をおとしめる行為に誰も何の後ろめたさも感じなかったのも、そもそも当時は儒教道徳がなかったから。
娘の容姿が権門家の浮沈を左右した時代です。父親は娘を『ミカドに愛される女』に仕立て上げるべく、全財力をかけて「男をそそる女」を養成。美貌第一、性格二の次。
「若々しく美しく見えることが勝ち組の人生を送れる」という、ある意味、今も昔も永久不変の法則を再認識させられる本です。