『鈴なり星』の雑記

こちらは『鈴なり星』の平安時代物語や創作小説以外のブログです

『平安朝 皇位継承の闇』


『平安朝 皇位継承の闇 倉本一宏著
        角川選書 ¥1700』

平安王朝の天皇の狂気は果たして正当に書かれていたのか、を追求したかなりマニアックな本。

このまま傍流で終わるのはいやだ!と野心まんまんな人物が、どれだけ主流をおとしめることに腐心したかが歴史史料を使って丁寧に説明されています。
説話集や歴史物語に紹介される「天皇の奇行や暴虐性」をへええーとそのまんま信じていたので、
「そもそも歴史書を作った側に政治的意図があったのでは?」
という著者の「そもそも論」が興味深く面白かったです。過去の歴史文献から多くの事実を学ぶその「文献」を疑えとな?これは研究をし尽くした著者のような歴史学の第一人者でないと言えない言葉かも。

正当な天皇としてまつられた一条帝が、もし傍流として蹴落とされる立場だとしたら?
中宮定子への愛情の深さも、盲愛だのけじめがないだの難癖つけられるんだろうな。髪をおろした定子を還俗させたことも、純愛調でなく恐るべき愚行とかすさまじき執着ぶりとか記録されたのかもしれない。権力を掌握したい者の思惑で、同じような行為がかたや狂人扱いされ、かたや一途な愛情と称賛されるのか。でっちあげ恐いわー。