『鈴なり星』の雑記

こちらは『鈴なり星』の平安時代物語や創作小説以外のブログです

『FKB ふたり怪談 肆(し)』


『ふたり怪談 肆 平山夢明福澤徹三
        竹書房文庫 ¥638』

怪談実話の二大巨頭がタッグを組んだ(裏表紙の紹介文より)と紹介してあっても、必ずしも実話怪談の本ではありません。実話を期待して読むとちょっとショボーンな気分になります。
特に平山夢明のパート。こちらは小説風あり、おとぎ話風あり。
福澤徹三パートは不安感をあおるおなじみの文体。

平山パートの『異物』『明滅』などは読者を怖がらせる気まんまんな感じがよく伝わってきて、まるで水戸黄門を見ながら、
「そろそろ『この葵の紋所(怖いオチ)が目に入らぬか』が来るかな来るかな。。。キター」
の気分。
『気遣い』『おちゃらかほい』『よっぱらい』『イクオ』などはおとぎ話。特に『よっぱらい』は、タヌキ(キツネでも可)に化かされ泥だんごをごちそうと思い込んで食べたり逃げても逃げてもふもとにたどり着けなくていつまでも同じ場所をぐるぐる回ってる系の日本昔話を思い出させるし、『イクオ』はカッパ系の昔話みたい。どれも不気味どころかほのぼのとしてしまいました。『気遣い』なんてかさ地蔵思い出した。

福澤パートの第一話『死の前の写真』。御嶽山噴火のニュースの後に読むと複雑な気持ちになります。ニュースでは亡くなられた方々の噴火直前に撮られた写真がいくつも紹介されてましたが。。。どーなんよ福澤氏。少なくともこの本に書いてあるような「ぞっとするほど存在感のなさ」や「紙のように白い顔」なんてまったく感じなかった。怪談作家の彼らなら数年後に、
『誰もが知ってる山岳災害の被害者たちが最後に写したスナップショットには、致命傷の噴石が当たったと思われる首や腰部などがぼんやり透けて…』
とか書いたりするんだろうか。書きそうやで…不謹慎だけどそう思ってしまいました。
『四人の眼』。郵便受けのすきまからのぞく四人の眼。あんな狭いところに四人ぶんの眼って設定が不気味なんですが、一人暮らししたことのある人ならアパートの扉の新聞受けのイヤな思い出ってあるんじゃないかな。そういう記憶を呼び起こさせる書き方、福澤氏はすごく上手いと思う。

無難におもしろい短編集です。あ、でもよかったなーと評価できる点が一つあるww
「○○の知り合いの霊感強い人」な話が意外と少なかったのがよかった。『鬼』『箪笥』『データ』くらいかな。『データ』では、霊感強い叔母さんがトートツに乗り込んでトラブルを処理するんだけど、ちゃぶ台返しのような急転直下ぶりでした。なにこれ。
これだから困った時に霊能者が一発解決!系は(以下略)