『鈴なり星』の雑記

こちらは『鈴なり星』の平安時代物語や創作小説以外のブログです

『出没地帯』

 

『出没地帯 川奈まり子著 河出書房新社 ¥1300』

前書きも兼ねたような第一話「怖い私」は、同業者で著者と共演したAV女優さんたちが何人も気の毒な亡くなり方をしているという話。普通の怪談実話本は他人の怪異体験が語られるものですが、この本は著者の怪異体験が非常に多いです。

一話一話の最後に、怪異に遭遇した地名(出没場所)もきちんと明記されており、近隣の人が読んだら「えっあそこそうなの?」って感じ?関東限定だけど。

貸しスタジオが元廃病院とか元事故物件と言う話は怪談本でおなじみですが、閑静な住宅街の空き家の一戸建にも、ハウススタジオとして管理されているものがいくつもあるというのはちょっと驚きました。「開かずの邸」「辻に建つ家」などの話がそれなんですが、それらの家の持つ歴史と言うか背景がすごく怖いです。

それら怪異が出没する場所の瘴気を敏感に察知する、いわゆる霊感の強い人はたまったもんじゃないだろうけど、瘴気の真っ只中にいてもなんの悪い空気も感じないカップルの話「樹海のモーテル」はなかなか面白かったです。タイトルでストーリーまるわかりなんですが、モーテルの霊気にあてられ息も絶え絶えな彼氏と、その隣で霊気をまったく感じないお日さまのように明るい彼女の対比に、もうあなたたち結婚しなさいと笑ってしまった。
その次「けいこちゃん」はとても哀れで切ない話。3つくらいの幼い女の子が時代を経てもずうっと同じ家に棲みついてるという話ですが、昔は子供の死亡率高かったからなのかなあ、誰かこの子を成仏させてやってほしい。心からそう思いました。