『鈴なり星』の雑記

こちらは『鈴なり星』の平安時代物語や創作小説以外のブログです

『信州怪談』

『信州怪談 丸山政也著 竹書房 ¥680』

長野県に特化した実話怪談集。
現代に起きた怪談はもちろん、民話や伝説など幅広く掲載。伝説といってもファンタジー系ではなく、確かにそこで何かが起きたという痕跡が残っている話が多数掲載されています。

山岳系の怪異談や民話がとても興味深く、その場所でしか起こりえない不思議な「分杭峠」の現象、難所中の難所で事故が多発した上高地「釜トンネル」の話、戦国時代から筋金入りの心霊スポット「塩尻峠」の話などなど、もっと事例を紹介してほしいくらい。信州各地に伝わる「信州の妖怪たち」も面白かったです。特にカッパ。カッパ伝説にハズレなし。病によく効く漢方薬の製法をカッパに教えてもらう話なんですが、こういう縁起をはかせるとは商売上手なお奉行さまだなと感心しました。

「厳しい自然に囲まれた信州人は不平不満を言わず真面目」と言うのが関西人である自分の勝手なイメージなのですが、そのイメージを崩さない怪談も多かったです。虫の知らせを感じた「碓氷峠」や「雪をかくひと」など。追いかけられるとか呪われるとか恨まれる系の話は見当たらず。自分はこんな目に遭って死んだのだ!と訴える話がもっと読みたかったかな。

しかしそれらの感想を抑えてダントツにドン引きしたのは「おじろく、おばさ」の話。
実際に近代まで続いていた奇妙な風習を紹介した、わずか3ページの話なのですが、これが一番記憶に残って怖過ぎ。自我を抑えつけられて育てられたおじろくやおばさたちの忌まわしい風習の話に圧倒され、他の話がかすんで見えるほどゲンナリしました。