『鈴なり星』の雑記

こちらは『鈴なり星』の平安時代物語や創作小説以外のブログです

遠藤周作『蜘 蛛』


『蜘蛛 遠藤周作著 出版芸術社¥1500』

前述の『怖い話(福澤徹三著)』の中で、作者が中学生の頃読んだ『怪奇小説集(遠藤周作著)』がとてつもなく怖かった、と紹介されていたので図書館で借りて読んでみました。
『蜘蛛』には、遠藤周作怪奇小説集に収録されている短編がほぼ載っています。

三つの幽霊/蜘蛛/黒痣/私は見た
月光の男/あなたの妻も/時計は十二時にとまる
針/初年兵/ジプシーの呪/鉛色の朝/幻の女
ジャニーヌ殺害事件/爪のない男/姉の秘密
娘はどこに/憑かれた人/気の弱い男/恐怖の窓
枯れた枝/生きていた死者
  
タイトル見るだけでも、禍々しい内容を予感させるに十分なのですが、本当に不気味なものからオチがお笑いになるもの、あるいは怪談かと思ってたら実は何でもなかった…はずなのに結末はとてつもなく不気味なもので…などなど、いろんな「怪奇」が盛り込まれた良本。淡々とした文章が怖さをかきたてます。

「とてつもなく怖かった」と福澤徹三氏が述べていた『三つの幽霊』の温泉旅館の話は、旅行の前には読みたくないな。霊体の描写が具体的。
『月光の男』では謎の多い実話を心霊話に仕立て上げ、恐怖はさらに倍増。実際の事件は昭和24年でこの短編の初出は昭和34年とあるので、相当衝撃を受けた読者も当時多かったんじゃないかなあと思います。
『幻の女』は一見ハッピーエンドだけどひょっとしたら3年後くらいに…と思わせる終わらせ方が不気味。
『あなたの妻も』では自分が産んだ赤ちゃん憎さのあまり仕出かした所業のあたり正視に耐えられず、読むのも怖ろしかったです。
『時計は十二時にとまる』の迫真の描写は、一緒にゲテモノ料理を食べさせられている気さえしました。ぐええ。