『鈴なり星』の雑記

こちらは『鈴なり星』の平安時代物語や創作小説以外のブログです

『白異本』


『白異本 外薗昌也著 廣済堂文庫 ¥676』

赤異本→黒異本→白異本とどんどんグロさがひどくなっていってる気がする。心霊話というより「やっぱ生身の人間が一番怖いよねー」な方向にシフトしてますよ全体的に。
犯罪ネタに対する不安を喚起させるような話ばかり。インパクト大です。

関係者や本の読者に次々と障りがおきるらしく、それらが「黒い波紋」に延々と、それはもう延々と披露されてるんですが、著者は本書の中で、

”怪異を起こすのは人の暗示によるものだ”

と指摘しています。担当編集者にあんなことが起きたとか読んだ直後の知人がこんな目に遭ったとか暗示のタネを書きまくって、読者が暗示にかかったとしか思えない。もしくは「ちょっと盛って書けば外薗氏の眼にとまるかも」みたいな下心で読者も投稿したとか。そうであれば、著者のもくろみ大成功ですよ。
素人投稿で言えば、著者は、

”あえて修正せず、原文ママで”

ネットからの投稿を載せまくっています。出版の際、いちいち許可得たんでしょうか。
福澤徹三氏が『怪の標本』で、

”基本的にウェブサイトに掲載されている文章を所有者に許可なく転載するのは著作権侵害にあたる。これは有罪になると3年以下の懲役または300万円以下の罰金を課せられる。”

と書いてるんですよね。トラブル起こさずクリーンな形で出版されたのでしたら、本書に載せたネット上の付き合いの人たち全員に許可を得たか、もしくは創作か、どちらかとしか思えない。創作だとしても、ほかの作家では見られない面白い演出だからまあいいか。
ただ、メールやSNSでのやりとりで集めた、

”他人の、それも素人の創作物を見ながら着想を練ろうとは、作家として卑怯極まりない手段に思える。”(福澤徹三『怪の標本』より)

のではないでしょうか。

批判しまくりになってしまいましたが、それでもこのシリーズには何かこう、人を惹きつける不気味な毒があると思います。実際もう3冊買ってるわけだしwあまりにも異彩を放つシリーズです。