『鈴なり星』の雑記

こちらは『鈴なり星』の平安時代物語や創作小説以外のブログです

『京都怪談 神隠し』


『京都怪談 神隠し 竹書房文庫 ¥650』

京都にゆかりのある作家たちによる京都が舞台の実話怪談集。
朱雀門出、田辺青蛙、舘松妙、深津さくら、花房観音が執筆。
京都、という言葉には抗いがたい魅力があって、それはこの地の文化や歴史がとてつもなく厚い層になってるのが理由だと思うんです。そのぶ厚い層から時々はみ出るように、歴史の犠牲になった人々の怨念が目撃される、そういう暗くイケズでネチっこい怨念まみれな話を期待して購入しましたが、思ってたのと違う感じでした。

興味深かった話をいくつか紹介。
「京都の女というものは」幕末頃の日常生活に紛れ込んだ凄惨な話。凄惨なのに会話がコント的でそのギャップがすごい。
「塗りつぶし」心霊写真を持ち込まれた写真屋の話ですが、関係者ぜんぶ祟ったる!という霊の意気込みを感じられる話です。
花房観音氏の話は京都怪談というカテゴリとはちょっと違うと思うんですけどどうでしょう。クセのすごい著者とクセすごな知人たちにまつわるイヤな話です。「死神」のラストに書かれていた源氏物語・六条御息所の思いがとても哀れでした。
”正妻が怨み殺されても源氏は女漁りを止めることも反省することもなかった、だから六条御息所も成仏できなかったのだ”
人間だった時の尊厳がすっかり消え、源氏が女漁りをやめないせいで怨念の意識だけが永遠に残り続けるってまさに地獄。